広報案内・レポート 一覧

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    2023年7月8日

    「杉浦非水展」を見て

     明治から昭和にかけてグラッフィクデザイナーとして活躍した杉浦非水の展覧会「杉浦非水、時代をひらくデザイン」が、群馬県立近代美術館で開催され約300点が並びました。
     1室には、現存する非水の日本画作品最大級の藝大卒業作品「孔雀」が展示され、同室に、図案家としての方向を決めるきっかけとなったアール・ヌーヴォーの資料、ミュシャのポスターが展示されていました。中澤弘光と共に黒田清輝の家に住んでいた当時、中澤と合作した「みだれ髪歌がるた」の、それぞれが描いた絵には、二人の弾むような若さが感じられました。
     非水は、三越のポスター、PR誌表紙などを担当し、並行して他の企業のデザイン、装丁・雑誌表紙を手掛け、簡潔で無駄のない形と空間、洒落た色調は現代でも色あせないデザインでした。装丁された本は、立てて展示されていて、あらゆる角度から鑑賞でき、見飽きる事のない展示となっていました。
     明治45年中澤弘光、三宅克己らと「光風会」を結成し展覧会を開催した際の「光風会展」の非水デザインの斬新なポスターがありました。
     平成31年「第105回記念光風会展」の記念グッズの「トートバック」は、この明治45年「第1回光風会展」のポスターから作成されたのです。
     有名すぎるほどの「東洋唯一の地下鉄道 上野浅草間開通」「新宿三越落成」のポスターと原画は、奥行きと高さを強調し、遠近法を効果的に用いた構図です。その斬新さと迫力に圧倒されました。
     「非水百花譜」の章では、写生帖やスケッチからは非水の並々ならぬ自然への飽くなき関心と視線が感じられ、写生で養った描写力が図案に生かされていたことがうかがえました。時を経ても新鮮な魅力を放つ図案や、スケッチ、デッサンからは、自然を見つめなさいと言われているようでした。
     会期中、何度も足を運んだ今回の展覧会は、グラフィックデザインの先駆者・杉浦非水の生涯とその功績を知る事の出来た充実した内容でした。
     第4章最終のコーナーには、非水の絶筆とされる小品「雨」が展示されていました。この作品は没後、昭和42年の第52回光風会展に遺作として出品されたのです。(今井ひさ子 記)

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    2021年12月12日

    彩・光・静寂ーその先へー展覧会レポート

    10月15日(金)〜12月12日(日)に広島市の泉美術館にて、工芸部評議員の長戸瑞子さん(以下長戸会員)が出品している3人展が開催されました。
    長戸会員は、毎年光風会展で染による平面作品を発表しています。

    泉美術館はビルの5階にあり、ガラス張りや吹き抜けの天窓から注がれる豊かな自然光と外に見える日本庭園により、独特な空気感に包まれた展示会場となっています。その空間へ、長戸会員の作品は、大型のタピストリー4点、5枚のタピストリーを集合させた作品1点、大型パネル作品8点、屏風2点、小立体作品3点と、さまざまな表現による染作品で見ごたえのある展示となっていました。

    以前は具象的なものを簡略化して構成していたそうですが、現在はエスキースをもとに、構図はダイレクトに画面と対峙して制作していくとのこと。染料には白がないため、生地の色の白をどこに置くかをまず考えるそうです。

    技法はロウケツ染めで、ロウを強力でのびがあり、ひび割れを起こさないようにするため、2種類のロウをブレンドするそうです。そのロウは、チャンチン(柄杓のような道具)と電熱線により温度管理を行いながら作業を進めるそうです。さらに、裏表両方染めるという手間のかかる作業を積み重ねていきます。また、制作時に必要な木枠はご自分で作り、タピストリーのように長い作品は、その木枠をずらしながら工夫して制作しているそうです。スパッタリング(霧吹き技法)による独自な技法も展開して制作されています。

    女子美術大学の学生時代はキュービックデザインを専攻されていたとのこと。「染めによる立体作品をもっと作ってみたい」という長戸会員の意欲的な言葉が印象に残りました。

    下記のURLから、会場風景を左右360°方向に渡って見ることができます。
    http://www.izumi-museum.jp/exhibition/exh21_1015.html

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    2021年7月13日

    石川みち子和紙工芸展レポート

    7月6日(火)〜7月11日(日)に長野市のギャラリー82にて、工芸部正会員の石川みち子さん(以下石川会員)の個展が開催されました。
    石川会員は、毎年光風会展で紙芸による平面作品を発表されています。

    今回の個展では、四神や太陰歴、月を中心とした7つの星等のイメージを展開させ、目には見えないもの、心象風景的な世界観を和紙でカタチにしたとのこと。

    「広いスペースに自分の作品を並べ眺めてみたい」という思いがきっかけとなった10年ぶりの個展は、約80坪の大会場に42点の100号~6号の紙芸作品が展示され、見応えのある展覧会となりました。

    光風会展等の展覧会に出品した作品は、いつも「これで良いだろう」と思い完成させてきたそうですが、作品を改めてこの広い個展会場に並べてみると、足りないところがよく見えてきて、さらに手を加えたくなったとのこと。

    40年前から紙芸を始め、当初はちぎり絵を中心に表現してきた石川会員。20年くらい前から細く切った紙をひねってひも状にした「和紙を撚る(よる)」という立体的な表現を取り入れるようになったそうです。

    制作では、イメージや構図、色彩計画等をしっかり決めた後、まず、使用する和紙を染色するところから始めるそうです。また、制作途中でイメージに合わないと感じた場合は、改めて和紙を染め直すこともあるとのこと。
    また、和紙は一度貼ってしまうと張り直しがきかないため、失敗した場合は、それを上手く活かす方法を考えながら進めるそうです。
    「それがまた面白いところ」と力強く答える石川会員の言葉が印象に残りました。
    (写真提供/﨑長 史)

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    2020年9月17日

    﨑長 史展 ー丸い・まぁるいー 展覧会レポート

    9月8日〜13日にギャラリー銀座にて﨑長 史 理事(﨑長以下先生)の個展が開催されました。
    﨑長先生は、毎年光風会展で紙芸による平面作品を発表されています。

    個展会場には、展覧会のタイトルにあるように、色彩鮮やかな大小の円形の形をした作品が展示されていました。
    﨑長先生に、今回なぜ丸い作品をテーマにされたのかを伺ってみました。
    すると「丸が好きというのが一番です。主人が150枚のCDを処分するというので、何かできないかと思ったのがスタートです。」とのこと。

    CDがベースになっている作品が120点展示され、大きな正円の作品の中には、LP盤(レコード)をベースにしているものもありました。
    CDやレコード盤はプラスティック製品なため、紙との相性の良い接着剤を新たに見つけ出し使用しているそうです。

    﨑長先生の作品の一つ一つはとてもユニークで、丸の外側の世界まで感じとることができます。溢れる色彩の音が聞こえてきそうな素敵な展覧会でした。

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    2019年12月18日

    桂川幸助–織りの風景– 展覧会レポート

    11月23日〜1月12日に相模原市民ギャラリーにて桂川幸助常務理事(以下桂川先生)の個展が開催されました。
    桂川先生は、毎年光風会展で綴織(つづれおり)による平面作品を発表されています。

    展覧会の初日に伺い、桂川先生からいろいろお話しをお聞きすることができました。
    綴織は紀元前から織り続けられている織りの技法です。
    一般的に織物は、経(タテ)糸を織機に掛け、その経糸を上下に開口(かいこう)させその間に端から端まで一本の緯(ヨコ)糸を通して布にしていきます。
    桂川先生が行っている綴織(つづれおり)は、模様に合わせて別々の緯糸で織り上げていく織り方で、織の中では一番自由に模様を織り出せる技法です。

    今回の個展は、相模原市にゆかりのある作家を紹介する「ギャラリースタッフ・セレクション」という企画展とのこと。

    桂川先生の作品のなかにある温かな空気感、甘やかさを感じる色彩、そして、どこまでも広がっていくような景色がギャラリースペース全体に広がり、触れなくてもそのやわらかさや温かみを感じることができる素敵な展覧会でした。

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    2019年11月8日

    今井ひさ子 染展レポート

    10月19日〜27日にアートミュージアム赤城にて今井ひさ子評議員(以下今井先生)の個展が開催されました。今井先生は、毎年光風会展で染めの平面作品を発表されています。

    個展の作品テーマは「さわやかな空気や光の空間表現」とのこと。技法としては、「ろうけつ染」「糊染」「捺染」等の3つの技法を併用されているそうです。
    「ろうけつ染」は、蝋(ろう)が染料をはじくことから、染め残したい 部分を蝋で防染する技法です。「糊染」は、染め残したい部分に糊(のり)を置き防染する技法です。そして「捺染(なっせん)」は、染料を捺染のりに混ぜてペースト状にして印捺する技法です。それぞれ使用した防染材を除去して、初めて模様が現れてきます。

    心がけていることは、白を色として扱っているため、白の分量と分割、配置を熟考しているとのこと。また、染料の透明感を損なわず、多色の重なり合いでも色が濁らないように、セロハン紙を重ねたような色調で仕上がる様に、心掛けているそうです。

    光風会展では見ることのできない小品群も展示され、鑑賞する人を包み込むようなすてきな展覧会でした。

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    2019年10月4日

    澤田倭文子 桜染む–桜を織る– 展覧会レポート

    9月23日から29日に東京赤坂のドイツ文化会館にて、工芸部の澤田倭文子会員の個展が開催されました。
    澤田会員は、毎年光風会展で織りの平面作品を発表されています。
    「桜」をモティーフとした十数点の大型のタピストリーを中心とした展示でした。
    作品に使われている糸は、草木染めと言われる全て自然の花や枝、主に桜から染めた糸を使用しており、縦糸はバラで染めたグレーの縦糸を使っているとのこと。
    個展会場のレンガの壁面とタピストリー作品との対比がまた一味違う空間を生み出していました。
    この個展の前(今年の春)にニューヨークでも個展を開催し、単身で現地へ行かれたそうです。
    絵の具では表現できない天然の染料による透明感やみずみずしさは、さまざまな国の方々にも感動を与えています。

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    2018年9月29日

    岩井絹江 革工芸展 レポート

    9月22日から29日に銀座のギャラリー杉野にて、工芸部の岩井絹江会員の個展が開催されました。
    岩井会員は、光風会展で革工芸による平面作品を発表されています。
    制作方法は、木製パネルの上に土台となる皮革を貼り、花や街等、自分の表現したいものを描き、水分を吸収すると柔軟になる皮革の特性を生かしながら、「切る」「削る」「編む」「貼る」等のさまざま手法でレリーフ状に肉付けし、自分の思いを表現しています。
    今年は革工芸を始めて35年の節目の年とのこと。皮革に鮮やかな彩色を施した新たな作風を加え、感謝の思いを込めながら制作されたそうです。

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    2018年9月26日

    今牧豊宏 作陶40年の歩み展レポート

    8月23日から8月28日に、長野県飯田創造館にて、工芸部の今牧豊宏評議員(以下今牧先生)の40年の歩み展が開催されました。
    今牧先生は、光風会展で陶芸作品を発表されています。
    今牧先生の窯では、作品の周囲に耐火レンガを置き、窯の中の炎の動きや流れをコントロールしながら焼成するという独自な方法をとっているそうです。
    黒い色の部分は還元焼成、赤い色の部分が酸化焼成で、今牧先生曰く「炎の痕跡を写す作業」とも言えるそうです。
    光風会展では見ることのできない貴重な平面作品や実用器を含めた90点が展示されました。

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    2018年9月2日

    﨑長 史 寄贈記念作品展レポート

    7月5日から9月4日に、千葉県御宿の月の沙漠記念館(童謡「月の沙漠」の作詞で知られている加藤まさをの貴重な資料や作品が常設)にて、工芸部の﨑長史監事(以下﨑長先生)の寄贈記念作品展が開催されました。
    﨑長先生は、光風会展の他、さまざまな地域や国際展で、紙芸による平面作品を発表されています。
    長きにわたり創作活動等で縁のあった御宿町へ、作品35点を寄贈することとなり、今回町の厚意で新作を合わせ50点を展示する大きな展覧会が開催されました。
    和紙のさまざまな魅力を余すことなく表現され、中には、﨑長先生の光風会展初入選の作品や、可愛らしいデザインの手ぬぐい等も並び、バイタリティー溢れた素敵な作品展示となっていました。

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